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2016/09/16

4つの軸で考える!経営分析の指標について

著者: パソナ キャリアコーチ(経理担当)

4つの軸で考える!経営分析の指標について

経理担当として業務に携わっていると「競合他社の財務状況と比較し、数値上の自社の強みと弱みを洗い出してほしい」というような分析を頼まれることがあるかもしれません。決算書を見て経営分析をする際、指標になるのはどんなものなのでしょうか。今回は、覚えておきたい「経営分析の4つの指標」についてご紹介します。

経営分析は多角的に、大きく4つの軸で考える!

企業の成長戦略を練るには、さまざまな指標を用いて多角的に現状を分析していく必要があります。その経営分析の軸は、大きくわけて4つ。それは「収益性分析」「安全性分析」「生産性分析」「損益分岐点分析」です。それぞれを計る代表的な指標を紹介していきましょう。

1.収益性分析

収益性分析では、具体的な額を指標とするのではなく、利益率を把握します。

総資産利益率(総資本経常利益率/ROA)

総資産利益率は、企業が投下した総資本によってどれだけの利益を生み出したかを分析する指標です。

総資産利益率(%)=経常利益÷総資産(純資産+負債)×100
⇒高いほどよい

自己資本当期利益率(ROE)

株主が投下した資本で生み出した利益率を知るための指標。資本運用の効率性を把握できます。

自己資本当期利益率(%)=当期純利益÷株主総資本×100
⇒高いほどよい

売上高総利益率

別名「粗利率」とも呼ばれる、売上高に対する売上総利益の割合を表す指標。企業のざっくりとした利益率を知ることができます。

売上高総利益率(%)=売上高÷売上総利益×100
⇒高いほどよい

売上高営業利益率

売上高に対する営業利益の割合を表す指標。企業の本業の営業活動の効率性がわかります。

売上高営業利益率(%)=売上高÷営業利益×100
⇒高いほどよい

売上高経常利益率

売上高に対する経常利益の割合を示す指標。経営の総合的な利益率を知ることができます。

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100
⇒高いほどよい

売上高販管費率

売上高に対する販管費(変動費・固定費)の割合を示す指標。この数値が低いほど、販管費を抑えて効率的な経営を行っているということになります。

売上高販管費率(%)=売上高÷販管費×100
⇒低いほどよい

2.安全性分析

安全性分析とは、企業の支払い能力を量る指標です。

流動比率

短期内に返済すべき負債「流動負債」に対する、すぐに現金化できる資産「流動資産」の割合を表す指標。会社の短期的な返済能力を知ることができます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
⇒高いほどよい

当座比率

流動資産のなかでも、特に換金性の高い資産「当座資産」の流動負債に対する割合を表した指標。企業の短期的な返済能力をより正確に把握することができます。

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100
⇒高いほどよい

固定比率

自己資本に対する固定資産の割合を示す指標。固定資産への投資が自己資本の枠内に収まっているかを把握でき、資金的に安全性の高い設備投資ができているかがわかります。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
⇒低いほどよい

自己資本比率

総資本に対する自己資本の割合を表します。自己資本は返済義務がないため、自己資本比率が高いほど外部の影響を受けにくいことを意味し、安全性が高いということになります。

自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
⇒高いほどよい

固定長期適合率

固定資産に対する、自己資本&固定負債の割合。固定資産への投資が、長期的な資本の枠内でまかなわれているかの指標で、長期的な安全性を知ることができます。

固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
⇒低いほどよい

3.生産性分析

生産性分析は、従業員や設備などをどれほど効率的に稼働させているかを量る指標です。

労働生産性

1人あたりの従業員が、企業にどれほどの付加価値を生み出しているかを知るための指標です。

労働生産性(%)=付加価値額÷従業員数×100
⇒高いほどよい

資本生産性

投下した資本に対して生み出された付加価値を見る指標。総資本を付加価値額で割って算出します。

資本生産性(%)=付加価値額÷総資本×100
⇒高いほどよい

労働分配率

生み出した付加価値のうち、人件費の占める割合を見る指標です。

労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100
⇒低いほどよい

4.損益分岐点分析(CVP分析)

損益分岐点分析では、売上高・コスト・利益という3つ関係性から、採算性などを見ます。

限界利益

限界利益=売上高-変動費

限界利益率

限界利益率(%)=限界利益÷売上高×100
⇒高いほどよい

損益分岐点

損益分岐点は、売上高と費用の金額がちょうど等しくなる売上高のこと。それよりもたくさん売り上げれば利益になるという地点のことです。

損益分岐点=固定費÷限界利益率

経営分析は奥が深い!

たくさんありすぎて驚かれたかもしれませんが、今回ご紹介したのは主要なものに過ぎません。経営分析の指標はこれらの他にも、まだまだたくさんあります。それだけ経営分析で考えるべきところが多く、奥が深いということです。

財務諸表を見れば、計算自体はさほど難しくないはずですから、まずはいくつか算出して、自社と競合他社で何が違うのかを比べてみてくださいね。

 

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参考サイト

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