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2015/08/17

「信用状(L/C)」開設依頼書の作成ポイント

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

「信用状(L/C)」開設依頼書の作成ポイント

言葉も商習慣も違う海外との貿易取引では、国内取引とは違ったさまざまなリスクが存在するもの。たとえば、「商品を入手できないリスク」や「代金を回収できないリスク」といったリスクが発生しますが、これを回避するために利用されるのが「信用状(L/C/Letter of Credit/エルシー)」です。

そこで今回は、貿易の基礎である「信用状開設(発行)依頼書」の作成のポイントについて、分かりやすくご紹介します。

信用状開設依頼書は売買契約の内容を記載

「信用状(L/C)*以下、L/Cと記します」の発行(開設)は、輸入者が銀行に依頼することからスタートします。L/Cは、輸入者と輸出者が売買契約した内容に基づいて銀行が発行するものなので、開設依頼書で記載する内容のほとんどは、その売買契約を集約したものになります。

下記、信用状開設(発行)依頼書のサンプルと、記載内容をご紹介します。

信用状開設依頼書は売買契約の内容を記載

サンプル内容

1 発行銀行
2 発行依頼日
3 L/Cの有効期限
4 L/Cの提示先(受益者の所在国)
5 発行依頼人(Applicant)
6 受益者(Beneficiary)
7 L/Cの通知方法
8 通知銀行
9 信用状金額
10 確認信用状や譲渡可能信用状にする要否
11 発行銀行から買取銀行への決済方法
12 受益者が代金を受領するための決済条件(手形条件)
13 分割積みの可否
14 積替えの可否
15 船積港と荷降港
16 船積期限
17 商品の明細
18 貿易条件
19 手形買取に必要な船積書類の種類と通数
20 船積書類の種類以外の手形買取条件
21 その他備考
22 輸入金融を利用する場合の内容
23 輸入した商品の販売予定先
24 輸入した商品の販売に係る決済方法
25 発行依頼人の署名・捺印・サイン
26 信用状統一規則準拠文言

L/C特有の記載事項

記載内容のほとんどは、輸出者と輸入者のあいだで取り決めた契約内容を反映したもの。ただ、記載すべき内容の一部にL/C特有のものがありますので、上記サンプルの番号に沿ってご紹介します。

3.L/Cの有効期限

L/Cで支払いを受けることができる(支払い保証されている)有効期間のことです。一般的には、船積期限の10〜15日先の日付に設定されることが多いです。

7.L/Cの通知方法

開設銀行(輸入地銀行)から通知銀行(輸出地銀行)へのL/C通知には、以下の3つの方法があります。

・郵送(Air Mail)…郵送で届けられる方式
・プレ・アド方式(Preliminary Cable Advice)…電信(Cable)でL/Cの内容を伝える事前通知が届き、後に正式なL/Cが郵送される方式
・フル・ケーブル・アドバイス方式(Full Cable Advice)…L/Cが電信で届けられる方式

通知の早さと手数料は、ともに「郵送 < プレ・アド方式 < フル・ケーブル・アドバイス方式」。どの方式を採択するかは、取引相手国との距離や契約によって異なりますので、実際に作成する際は、社内の方に確認しましょう。

8.通知銀行

通知銀行は、L/Cを発行した開設銀行が、輸出者(受益者)に対してL/Cを通知する輸出地銀行のこと。輸入者は信用状開設依頼書を作成する際、輸出者から通知銀行の指定があれば記載し、指定がなければ空欄にしておきます(指定のない場合は、信用状を発行した開設銀行が、輸出者の所在地近隣にある銀行を選定します)。

20.船積書類の種類以外の手形買取条件

冒頭の「Documents to be presented within _ days after〜」は、船積日(B/L発行日)以後、何日以内に船積書類を輸出地銀行に持ち込まなければならないか(書類提出期限)を指定する欄。通常は、5〜10日以内に設定します。

箇条書きになっている欄、L/C決済に伴う銀行手数料を誰が支払うのかを記載します。一般的には、輸出国での手数料は輸出国、輸入国の手数料は輸入国で支払いますが、実際に作成するときには、過去に開設した信用状や社内の方に確認しましょう。

22.輸入金融を利用する場合

輸入者が銀行から代金支払いの立て替えや支払い期限の猶予など、「貿易金融」を受けることを希望するときに記入します。

※関連記事:『輸出者が代金回収までのあいだに融資を受ける「輸出金融」』『輸入者が輸入貨物代金の支払い猶予を受ける「輸入金融」

26.信用状統一規則準拠文言

「信用状統一規則」とは、L/Cについて、国による法律の相違から生じるトラブルを避けるべく、国際商業会議所(ICC)が定めた国際ルールで、下記の文言はそれに準拠するという宣言です。

信用状統一規則準拠文言
This credit is subject to uniform customs and practice for documentary credits (2007 Revision), International Chamber of Commerce Publication No.600.
<日本語訳>
この信用状 は、「荷為替信用状に関する統一規則及び慣例(2007年改訂版)、国際商業会議所出版番号600」に準拠します。

基本的に、世界の銀行ではこのルールに準じて信用状が取り扱われています。日本の銀行のほとんどが準拠しているようですが、もしこの文言がない場合には、開設銀行のルールに従うことになりますので、確認が必要です。

信用状開設(発行)依頼書の作成のポイントをしっかり覚えて、貿易実務に活かしていってくださいね。

 

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参考サイト:

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