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2016/09/05

B/LのConsignee(荷受人)欄に書かれている「To order」って?

著者: パソナ キャリアコーチ(貿易担当)

B/LのConsignee(荷受人)欄に書かれている「To order」って?

今回は、B/L(Bill of Lading/ビーエル/船荷証券)のConsignee(荷受人)欄に「TO ORDER」や「TO ORDER OF SHIPPER」と記載されている「Order B/L(指図式船荷証券)」についてご紹介します。

B/Lには「指図式」と「記名式」がある

B/Lには、荷受人(Consignee)欄に、「TO ORDER」、「TO ORDER OF SHIPPER」と記載されているもの(①)と、会社名など具体名(特定人)が記載されているもの(②)があります。

この2つのB/Lは、ただConsignee(荷受人)欄の記載が違うだけなのですが、前者(①)を「Order B/L(指図式船荷証券)」、後者(②)を「Straight B/L(記名式船荷証券)」と区別するくらい、“流通性”において大きな違いがあります。(記載内容の違いは下図参照)

B/Lには「指図式」と「記名式」がある

①のように、Consignee(荷受人)が「TO ORDER(指図により)」や「TO ORDER OF SHIPPER(荷送人[輸出者]の指図により)」*となっている「指図式」B/Lは、輸出者の指図により、誰にでも貨物を譲渡できます(=流通性がある)。一方で、②の特定の荷受人が記載されている「記名式」B/Lは、その特定の荷受人が譲渡しない限り、第三者に譲渡することはできない(=流通性がない)という点が違うのです。

*ちなみに、「TO ORDER」と「TO ORDER OF SHIPPER」は、意味合いはほぼ同じで、実質的な差はありません。ただ、信用状(L/C)取引においては、輸入者が指示している通りに記載する必要があります。

「Order B/L(指図式船荷証券)」は、信用状(L/C)取引で用いられる

では、いったいどのようなときに「指図式」が用いられ、どのようなときに「記名式」が用いられるのかご紹介していきましょう。

結論から言うと、どんなケースでも「指図式」B/Lは有効ですが、「記名式」B/Lは一部のケースでしか有効ではありません。「記名式」B/Lは、一般的に、信用状(L/C)取引では用いられず、輸出者と輸入者が直接書類を送付する取引の場合にのみ利用されます。つまり、信用状(L/C)取引では、「指図式」B/Lしか取り扱われないということです。

これは、B/Lが第三者に譲渡できる有価証券である(B/Lの裏書き*をした者が財産的価値のある貨物を引き換える権利を有する)ことと関係しています。

*書面の裏に署名することを「裏書き」と言います。会社の社印+担当者のサインというケースが多いです。

信用状(L/C)取引とは、輸出者と輸入者のあいだに、輸出地の銀行(買取銀行)、輸入地の銀行(信用状開設銀行)が入る貿易特有の取引方法。B/Lは、他の船積書類とともに、輸出者 → 買取銀行 → 信用状開設銀行を経て、輸入者へと送られます。

B/Lを含む船積書類の記載内容などが信用状の内容通りであれば、買取銀行(および開設銀行)は輸出者の為替手形を買い取り、輸入者の支払いに先立って代金を支払いますが、銀行もただ単に輸入者の支払いを保証しているのでありません。銀行は「有価証券であるB/Lを担保とみなして」、代金を立て替えているのです。

この際、「指図式」B/Lであれば、“誰にでも譲渡できるB/L”ですから、買取銀行がB/Lを所有しているときは貨物の所有権は買取銀行に、B/Lが開設銀行に渡れば開設銀行に、と単純に権利が移転されるため、信用状(L/C)取引では「指図式」B/Lが用いられます(「記名式」B/Lでは、Consignee [荷受人] が特定されているので、B/Lを所有しているからといって、必ずしも貨物の所有者とはならないのです)。

ちなみに、一般的な信用状開設依頼書には、あらかじめB/Lの作成方法を指定する内容が印刷されていることが多く、“BILLS OF LADING MADE OUT TO ORDER AND BLANK ENDORSED”は、その定番の文言です。(下図参照)

<strong><b>「Order B/L(指図式船荷証券)」は、信用状(L/C)取引で用いられる</b></strong>” /></p>
<p>この文言は、輸出者(荷送人)に対して、「B/Lは単純指図式(TO ORDER)で発行し、裏面に被裏書人について何も記載せずに輸出者は裏書人として単に署名する、という、いわゆる白地裏書(blank endorsement)を要求する」ということを表したもの。</p>
<p><span style=*なお、信用状開設依頼書を作成する際、TO ORDER OF SHIPPERの “OF SHIPPER” を書き込んで、文言を付け加えることも可能です。“TO ORDER” の単純指図式に対して、“TO ORDER OF SHIPPER” は荷送人(シッパー)指図式と言います。

そのため、通常の信用状(L/C)取引では、輸出者は船会社に貨物の運送を依頼する際に、B/LのConsignee(荷受人)欄は「TO ORDER」にしてもらうよう依頼するのです。

実際に船会社との手続きを行うのはフォワーダーなので、貿易実務においては、輸出者は信用状にしたがってB/LのConsignee欄を記載してもらうようにフォワーダーに作成依頼して、B/Lを入手したら裏書きするだけ。また、輸入者においては、信用状開設依頼書のフォーマットにすでに書かれていることなので、特別意識することはないかもしれません。

ただ、貿易実務に携わる方は、今回ご紹介した「TO ORDER」の意味、consignee欄に記載する意味をぜひ知っておいてくださいね。

 

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参考サイト

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